旅行好きなので、旅行の話も書いていきたいと思いつつ…後回しにしてしまっています(言い訳です。笑)。
今回、デザインとアートの話としてもぜひ書いておきたいと思った場所へ行って来たので記しておこうと思います。
義実家のお墓が愛媛県の小さい町のお寺にあるので、数年に一度四国を行くのですが、愛媛に行ったついでに香川へ寄ったり、高知へ寄ったり、お祭りを見るのが好きなので昨年は阿波踊りを見に徳島へも行きました。
今回は、マイレージ特典でチケットが取れる場所への旅行を直前に決め、香川県〜高知県へ行ってきました。
香川と言えばうどん!なのですが、10年以上前から愛してやまない(!)うどん屋さんは、軒並み日曜がお休み。
開いているお店を2件、朝ご飯と昼ご飯で回り、香川県丸亀市へ向かいました。
国内旅行で地方へ行ったときは、目的地近くのお城跡と神社を回るようにしていて、候補に丸亀城があがったんですね。
丸亀市と言えば!猪熊弦一郎現代美術館MIMOCA
丸亀市と言えば!大好きな美術館、猪熊弦一郎現代美術館(MIMOCA)へ行かないわけには行きません。
猪熊弦一郎さんと言えば、三越の包装紙デザインが有名でしょうか。他にも本の表紙画などをたくさん描かれている画家です。
約13年ぶりに行ったMIMOCAは、変わらない懐の深さで迎えてくれました。素敵すぎる!

開放的なエントランスに大きなオブジェが3つ(1つ写ってませんが)。オブジェの向こうに猪熊源一郎さんの壁画があります。

こうやって人が座ってもいい。楽しいオブジェです。
細かい施設の特徴などは、MIMOCAのサイトを見ていただければわかると思うのですが、この日、どんな展示をやっているのか知らずに訪れたにもかかわらず、かなり好みの企画展&常設展に巡り会うことができました。
ひとつは、企画展「猪熊弦一郎展 風景、顔」。そして常設展「美術館は心の病院 猪熊弦一郎とMIMOCA」。

企画展では、奥様の肖像画から晩年の「顔」をモチーフにした抽象画作品。それからニューヨークに在住中にその景色に刺激をうけた風景画が展示されていました。
「顔」の作品も「風景」の作品も、テキスタイルにしてパネルにしたいほどすてきでした。
そして、今回とても感動したのが常設展。
美術館は心の病院 猪熊弦一郎とMIMOCA
常設展は、猪熊弦一郎さんが、このMIMOCAを建設されるときの想いがつまった展示でした。

展示の中にあった猪熊さんの言葉を一部ご紹介します。
例えばパリの子供たち、彼らの日常生活では公園の砂場で遊ぶのと、ルーブル博物館へ行くのと、同じ手軽さなのだ。手には玩具を持って、目からは世界的な芸術がしみこんでいる。(「工夫に限りはない」『PHP』 1949年10月号)
普通美術館というと、公園の真中できれいな芝生に囲まれ、噴水のあるような所に建てるでしょ。でもぼくは駅のまん前。旧制中学まで済んでいた城下町に突然現代的な建物がたつ。自由にお茶をのんだり、音楽をきいたり、本も読める設備が出来る。そこにはスーパーマーケット帰りの奥さんが、買物袋をさげたまま入っていいわけ。むかしは美の殿堂とかいってエリをただして入るような所が美術館だったけれど、気楽に普段の生活のまま美術に接近できるようにしたい。ヨーロッパの町はどこにでも中心に教会がある。同様に、いま美術館は町作りにとって必要な存在だと思う。非常にきれいで美しい空間に入っていって日常と違う体験をしながら自らにクエスチョンをつきつける。くだもの屋のリンゴと名画の中のリンゴの違い、美しさの違いを考える空間、それは人間の心をリフレッシュにして楽しませてくれるはずです。(「猪熊弦一郎 人と作品」『アート・トップ』1990年10・11合併号)
MIMOCAから感じられる、欧米の美術館っぽさはこれだったのか!と、とても腑に落ちました。
ヨーロッパの美術館、とても大きなところでも入場料とらないところがありますよね。ニューヨークの美術館も週に1回はフリーの日がありました。
お金のあるなしに関わらず、アートに触れることがその人の刺激になる。とてもすばらしいことだと思います。
日本でも、図書館は誰にでも無料で開放されています。学校にも図書館がある。これもすばらしいこと。
でも美術館は…まだエリをただして入るようなところが多いですよね。月に1回でもいいから、無料で開放する美術館や博物館があったらいいですよね。
アートを見る機会は、万人に等しく与えられて欲しいです。
猪熊弦一郎さんの想い
猪熊弦一郎さんが、自分の想いを込めた美術館の設計を依頼したのは、谷口吉生さん。
その依頼は、「日本の建築はこまごまとして、みんなスケールが小さい。僕はニューヨークに住んでいた。スケール感だけは大きくして欲しい。大きなスケール感がある建築で、光がよければ、あとは一切何も言わない。全部任せる」という依頼の仕方だったそうで、猪熊さんが谷口さんを建築家として信頼していたことが伺えます。
エントランスにある猪熊さんの大きな白い壁画。最初は、誰にでも描ける○(まる)と×(ばつ)をモチーフにした案を出したそうです。絵が描ける人にも描けない人にも、小さい子にも老人にも、誰にでも描けるモチーフを施すというのは、とてもすばらしいアイデアだと思うのですが、市の施設ですから「難しいだろうなぁ」と思ったと谷口さんがコメントした記事が展示してありました。

普通は自分の名前が冠される美術館なのだから、画家の方は折れないというか折れなくてもいいんじゃないかと思うのですが(画家でなくても、「先生」と呼ばれる方が話を聞いてくれないってことはままあるので。笑)、猪熊さんは、別のアイデアとして、現在の壁画の案を出されたそうです。
この壁画、MIMOCAのグッズにも展開されています。わたしはレターセットが特に好き。
猪熊さんは、展覧会のポスターも一流のデザイナーに頼むことをポリシーとしていたとか…。プロを信頼するってすばらしい。MIMOCAのポスター、デザインしたい!(笑)と展示を見たデザイナーならばきっと同じ妄想をしていたことと思います。
MIMOCAのすばらしさを行って感じてほしい
駅から徒歩30秒の立地にある現代美術館。高校生までの入館料はなんと無料なのです。子供たちを対象としたワークショップもさかんです。子供たちの育成に力を入れていることがわかりますね。
海外の大きな美術館や博物館で入館料無料のところがありますよね。ニューヨークの美術館は、確か週に1回、入館料無料の日があったと記憶しています。お金があろうとなかろうと、芸術に触れる権利がある。日本の美術館や博物館もそういう日を作って欲しいですよね。

中には図書館があり、コーヒーとケーキが楽しめるカフェもあります。ここも開放感たっぷりで素敵なんです。今回は時間がなかったので立ち寄れませんでしたが…。
終わりに
今回見た「美術館は、心の病院」というタイトル。展示の中の説明を読んでいくうちに、絵を描くことが好きだった幼い頃のことを思いだして泣けてきました。

すごく上手なわけではなかったけれど、とにかく描くことが好きで、外で遊ぶより描いたり作ったりして過ごすことが多かった。描き上げる、作り上げる瞬間の楽しさがたまらなかった。
私にとっての心の病院は、描くことだったのかなと改めて感じました。(最近ほとんど描いてませんが…)
MIMOCAは、常設展も定期的に入れ替えているそうですよ。ほぼ企画展ですよね。
この展示を最後に、美術館の長寿命化計画に基づく工事に伴い長期の休館を予定しているそうです。休館前の展示を見ることが出来てラッキーでした。